お願い!嫌にならないで
「それなら、山本くんに。一緒にこの契約書の取引先に行ってるので、話の内容の理解もしやすいと思います」
「あ、そうな──
いや、そうじゃなくて。
山本くんが、せっかくくれたチャンスなのだから。
教えてもらうのであれば、正直、誰だっていい。
しかし、今の俺には──
「水野さんじゃなきゃダメなんです」
「…………え、え?」
正直、今の俺は、とても気持ち悪い。
これは、いよいよ俺もストーカーとして嫌われる奴の、仲間入りだ。
辛い。
辛いが、覚悟しなければ。
「いや!その、水野さんが、この書類に一番お詳しいと聞いたので。山本さんから」
へへっ、とせめてもの愛嬌を、わざとらしくでも振り撒く。
振り撒いて、様子を窺うも、水野さんが複雑な顔をしている。
どんな感情でいるんだ?
俺が不思議がっていると、水野さんがゆっくりと立ち上がり、山本くんの方を見た。
「山本くん。まさかとは思うけど、辻さんに仕事押し付けたの?」