お願い!嫌にならないで
「あ、いやいや、そうじゃなくて……」
あの普段クールで腹黒で、すかしている山本くんが、珍しく焦っている。
この状況は、なかなか貴重だ。
それより水野さんも、予想外だった。
かなり、ピリピリしている。
確かに、人に仕事をぶん投げたとなれば、叱るのは当然のことだが、今回のこれは違う。
山本くんが、俺に気を利かせてくれたのだ。
俺の言い方一つで、流れ弾の被害を被ることになってしまった山本くんには、非常に申し訳ない。
急いで、水野さんを落ち着かせようと、弁明を図る。
「水野さん、水野さん!違うんです!俺がいろいろ覚えていきたくて。俺がしゃしゃり出ちゃったんですよ!」
「本当ですか?辻さん、山本くんのこと、庇ってませんか?」
「本当!本当です!」
水野さんはじっと、俺を見てくる。
完全に疑われている。
嘘を吐いて、少しの罪悪感はあるが、山本くんの厚意を無下には出来ない。
「ほら!お客様との契約書って、重要書類じゃないですか。だから、出来ることなら、一から理解して覚えたいなぁ、と思い……」
「山本くんも説明出来るくらいには、知っているはずです」
水野さんは、やはり手強い。
どうしよう。
返す言葉が見つからない。
「いや、ほら!あの──