お願い!嫌にならないで
「辻さん、突然どうされたんですか……?」
水野さんの目が泳ぐ。
きっと自覚があるのだ。
俺をわざと、避けていることに。
沈黙に、緊張が高まっていく。
可笑しな空気を作ってしまった、このことに対しての罪悪感はある。
この場に居る山本くんは、こちらに釘付けになっている。
中谷さんは、作業を進めているように見えるが、こちらを先程からチラチラと窺っている。
少し笑みが見えるのが、何だか落ち着かない。
それにしても、水野さんの動揺が、手に取るように分かる。
おそらく、おそらく嫌われていないのに、この反応をされるのは、不思議で仕様が無い。
いつかに山本くんに言われていたが、俺が鈍感だから、分からないのだろうか。
少し妥協をして、水野さんの気持ちに歩み寄る。
「すみません……仕事が終わったら、少しだけでも。お尋ねしたいことがありまして」
またどこかで、誰かが吹き出して笑った。