お願い!嫌にならないで



会議室の前まで来て、水野さんが鍵を回す。

ガチャンという開く音を聞いただけで、何故かしら緊張からか、体が強張った。

水野さんがまだ少し素っ気ない理由、俺が水野さんに嫌がるようなことをしてしまったのか、ということを確認したいだけだ。

それなのに、何だかいけない事をこれからするようで、変にドキドキしている。

やめろ!疚しいことを考えるな、俺!

大きく深呼吸をする。



「あ、辻さん……?」

「ん、はい!」

「開きました。どうぞ入ってください」

「あ、ありがとうございます」



自分でも分かる程、可笑しいテンションの俺を水野さんは不思議がる。

その横を通って、中へと入った。

俺が奥へ進み、水野さんが静かに扉を閉める。

話の切り出し方に、毎度のことながら困ってしまう。

シンプルに聞いてしまうことが出来れば、これ以上水野さんを煩わせることはないのだが。

この前の夜とは違って、話を始めにくい。

内容が内容というのも、もちろんなのだが。

今はそういうことではなく、



「水野さん?何でそんなに遠いんですか」



今は物理的な問題で、話を始めにくい。



「そんなに離れなくても……もしかして、俺、何かしましたか。水野さんの嫌がるようなこと」



自分で言っていても、悲しくなってくる。

とにかく、まずは話の出来る状態にもっていこうと思い、右足から一歩進もうとした。
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