お願い!嫌にならないで
こういうことは、一度軽はずみに言うと、後々、何度言っても信じてもらえなくなる。
そもそも、この会議室に来る前は、こんな話をするつもりは無かったのに。
「俺のこと嫌いですか?」という内容で、いくつもりだったのに。
今の状況が嬉しいのに、もどかしい。
もはやオーバーフロー中です、俺。
思わず、その場に頭を掻きながら、しゃがみ込む。
正面には、水野さんの足が見える。
綺麗な足してるなぁ、なんてこの期に及んで、そんなことを考えてしまう。
己を落ち着けるために、目を瞑って、もう一度息を吐き出した。
そして、もう一度、正面を見れば、水野さんが膝をついて座っていた。
俺はあまりに驚き、肩が跳ねた。
この状況でも、尻餅をついてしまいそうになるのに、彼女はまた頬を紅く染めたままで「大丈夫ですか……?」と心配してくれているようで、俺をじっと見ている。
もうここまでくると、安心できる。
「良かった。嫌われていた訳じゃなかったんですね」
「きら……そんな、私が辻さんのこと、嫌いになる訳ないじゃないですか」