お願い!嫌にならないで
「でも、ここ最近、水野さん、俺のこと避けていたでしょ?」
「そ、それは………………」
また水野さんが、しどろもどろになる。
言葉が聞き取れない。
つまり、この反応は、わざとではなく、意図的に俺を避けていたということだ。
「水野さん?」
「あまり、言いたくありません」
「え、何故です」
水野さんは勿体つけて「だって……」と、モジモジしている。
この前の焼き鳥を頬張る、可愛らしい水野さんもそうだが、こんな水野さんも、なかなか見ることなんて出来ない。
焦れったくなってきた。
「えっと……だから、何故……」
「………………辻さんのこと、好き……かもしれないから、です」
思わず、固まった。
淡い期待は、確かにしていた。
しかし、まさかこんなにも、どストレートに言われるとは、思っていなかった。
やばい。
毛穴という毛穴から、汗が噴き出している。
「かもしれない」だけど、「好き」と言ってくれた。
再び、嬉しすぎて、昇天してしまいそう。
いやいや、嬉しさを噛み締めている場合じゃないだろ、俺!
水野さんの表情を見ただろ。
あの水野さんが、俺なんかのために、勇気を振り絞ってくれたんだ。
早く返事をしないと、失礼だろ!
「あの、俺も──
「あっ、やっぱり、ごめんなさい……!」
俺が言い切らない内に、水野さんはスッと立ち上がり、駆け足で会議室を飛び出していった。
俺はしばらく唖然としたが、ふと冷静に戻る。
「え、待って。これは、また気まずくなるパターンのやつじゃ………………」