お願い!嫌にならないで
部長は、うーんと唸っている。
仕事に私情を持ち込むな!と言われてしまっては、そこまでだが。
しかし、小岐須部長はどちらかと言えば、そんな風に言う人ではないと思う。
社員に、ましてやこんな新人にさえ、寄り添ってくれる。
水野さんのことも、きっと。
「部長」
「わかった、わかった。うちの数少ない有能な女子社員を、また危険な目に合わせる訳にはいかないからな…………」
小岐須部長とは、こういう人だと信じていた。
有り難い。
すると、部長は机に肘を付き、顔の前で手を組む。
そして、小さな声でヒソヒソと話してくれる。
「ちなみに、前回は水野も、田中と顔合わせをしたんだろう?」
「ええ」
「どんな様子だった」
「田中さんが、執拗に言い寄っていました。それも馴れ馴れしく。あ!あと、うちの会社前で待ち伏せもしていました」
「何?」