お願い!嫌にならないで
中谷さんとの会話も落ち着き、ようやく自分のデスクに腰をおろす。
さて、今日の朝になって突然『一人で外回りしろ』なんて、言い渡されたものだから、困った。
今日もまた、山本さんか水野さんの後をついて回る頭でいたため、大幅に予定が狂う。
どうしようか、と悩んでいると、一本の電話が鳴り響く。
「おはようございます。エースワン株式会社でございます。お世話になります……はい。はい、ええ、左様でございますか」
中谷さんの丁寧な受け答えに、何となく耳がいった。
「それでは、担当の者に伺わせますので……はい、よろしくお願い致します。失礼致しますぅ」
受話器を置いた中谷さんは、小岐須部長の元へと歩いていく。
何やら話をしているようだが、内容は聞こえてこない。
何故かしら、胸騒ぎがした。
すると、会話を終えたらしい部長が
案の定、俺を見た。
目が合った瞬間、思わずぎょっとしたが、部長に名前を呼ばれるよりも早く、そちらへ向かった。
「お、お呼びでしょうか…………」
「ああ。よくわかったな」
「何だか、あまり良くない予感がしたので」
「その勘も、もしかすると、正しいかもしれないな」
部長は、苦笑いを浮かべている。
「辻。例の取引先からだ」
「え」