キミへ告げる想ひ
「菜々子どうしたの?」

「あ、いやさっき桂碁の話でアイドルの話が出てきたでしょ。
それ聞いて昔を思い出しちゃって」

「そういえば、昔ダンスやってたって言ってたよね。
確か」

「四月に話したことよく覚えているね。

でも正確にはバレエなんだけど。

私ね、小学校のころからバレエやってたんだ。
まぁ、それが影響していたのかはわからないけど、
その頃私はアイドルになりたかった…。

ステージの上で輝くってすごいなってずっと憧れを抱いてた」


「オーディションとかは受けたの?」

「受けたよ。受けたけど、落ちちゃった。
表現力が足りないってオーディション担当の人にそう言われた」

「それで、どうしたの?」

「あきらめちゃった。
お母さんにももう諦めなさいって言われてたし。


だから、桂碁がアイドル目指してるって聞いてすごいと思った。

椎ちゃんも言ってたけど、私にも桂碁の辛さはわからない。

だけど、大変だっていうのはすごい伝わるよ。

それに、私なんて才能すらないからアイドル目指すなんてやっぱり間違ってたんだよ」

そう言って彼女は顔を下げた。



「そんなことはないよ。

菜々子が踊ってるところを見たことないから実力はわかんないけど、
才能がない人はこの世にいないって俺は思ってるから」

「やっぱりアイドルやりたいの?」

淋の問いに菜々子は小さく頷いた。



「だったら来年の文化祭の有志にみんなで出てみようよ。

二人の願いを叶えるためにも…」

突然真紗実が声を上げた。
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