あのとき離した手を、また繋いで。


***


1学期最終日。
午前中で学校が終わってそのまま桐生くんとふたりでデパートに買いものに来ていた。



「これでよくね?」

「だーめ、ちゃんと黒くしなくちゃ。受験するんでしょ」

「……はいはい」



めんどくさそうに顔をしかめる桐生くんをよそに、綺麗に物たちが陳列された棚を見る。
今日はお互いに明るくしすぎた髪の毛にさよならをしようということで、髪染めの材料たちを買いにきた。


黒染めするにもたくさん種類があるんだな。

私はロングだからふたつはいるし、桐生くんのと合わせて3つは必要になる。



「ありがとうございましたー」



買いものを済ませてお店を出た。たくさんのショップが立ち並ぶデパート内は見ているだけでワクワクしちゃう。


たくさんの洋服屋さんやアクセサリー屋など、見れば見るほどほしいもは尽きない。



「ここからここまでくださいってやってみたくない?」

「発想が幼稚なんだよ」

「桐生くんに言われたくありませんー」



あーだこーだ言いながら歩いていると、浴衣フェアと銘打ってたくさんの可愛い浴衣が展示されているフロアにやって来た。


可愛いなあ。男の子用の浴衣もある。



「なに、欲しいの?」

「可愛いなぁと思ってただけ」



フロアの柱には花火大会についての案内が書かれてあるポスターが貼られてあった。

去年は夏希のアルバイトが重なって花火大会には行けなかったからな。


今年は行きたいな。



「……行く?」



ぼうっとしながらそのポスターを見ていると、桐生くんがそう言った。



「いいの?」

「いいよ。お祭りとか久しぶりかも」

「やったぁ、ありがとう」

「ん、ほら選べよ」

「え?」


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