あのとき離した手を、また繋いで。



橘モナさまへ


この手紙は私が死んだら中身を見ずにポストへ投函するように母に頼んでいました。

突然のことで驚いているかもしれないけど、この手紙を読んでいるということは、たぶんそういうことです。


橘さんには本当に申し訳ないことをしました。本当にごめんなさい。とても反省しています。


そして、ありがとう。
私があなたに伝えたい言葉は感謝の気持ちです。


あなたと夏希が別れてから、私は幼い頃から抱いていた初恋を実らせることができました。


ずっと夏希と恋人になるのが私の憧れで、夢でした。


ちいさい頃から持病をこじらせては入退院を繰り返していた私に友だちはおらず、ずっとひとりぼっちだったのだけど、夏希だけはずっとそばにいてくれた。ずっとずっと好きだった。


ずっとそばで夏希のことを見ていたの。
だから夏希がある女の子に恋に落ちたこと、すぐに見抜きました。


そしてなぜだか私はすぐに"夏希を取られたくない"と危機感を感じました。いままで夏希に想いを寄せる女の子は山ほどいたけれど、こんなことは初めてでした。


だからすぐに手を打った。
あなたのデタラメな噂の発信源は私。


でも逆にその噂がふたりを近づけた。私の完全なる計算ミスね。


ふたりが恋人同士になってから、たくさんの意地悪をした。別れてくれればいいって本気で思った。


だからこんなこと言うと変に思われるかもしれないけれど、ふたりを別れさせたこと、後悔なんてしていません。


だって夏希は私のことを本当に大切にしてくれた。
愛されていると、これまでに感じたことのない幸福感のなかで私は残された日々をいま、生きています。


すべてあなたのお陰です。ありがとう。


< 116 / 123 >

この作品をシェア

pagetop