あのとき離した手を、また繋いで。



読み終える頃には大粒の涙が溢れてでていた。


うそ……黒木さん……。
この手紙、いつ出されたの……?


手紙を胸に抱く。嗚咽を我慢することなく泣き続けた。涙のはっきりとした原因はわからなかい。


あまりに突然のことで心の整理がつかないのだ。


同じ学校に通っていて、話したこともある見知った女の子が亡くなったという残酷な知らせ。それがたとえ初恋の人を奪った人でも、嫌がらせされた人だとしても、悲しい気持ちになる。


そしてなにより、夏希が離れていたときも私のことを想っていたことをこんな形で知るなんて。


だけど正直、どうしていいのかわからない。
だって私のとなりにはもう夏希じゃない男の子がいるんだもの。


私のことを本気で好きでいてくれている恋人がいる。


だから、


「……ごめん、夏希……っ」



行けないよ。行けるわけない。


桐生くんのこと、いまさら裏切れないよ。


たとえ夏希がいま暗闇のなかにいるんだとしても。苦しんでいるのだとしても。


その傷を癒すのは、私じゃない。


私は君のもとへは行けない。


あの頃とはもう違う。


走って、息を切らして、君が苦しんでいるのなら、君のいる場所へどこまでも飛んでいけると信じきっていたあの頃の私はもう……。



「……っ……」



身体と心が震える。いつまでも涙は止まらない。


こんなに動揺して、私ってば……。


心のなかで本当の気持ちを叫んでいる自分がいる。でもそれを私は聞こえないフリをして、耳を塞ぐ。


ーーピンポーン。


家のインターホンが鳴った。古いタイプで、指で押してる間だけ音が鳴るやつだ。
そうだった、忘れていた。今日は桐生くんと会う約束をしていて、家まで迎えに来てくれるんだった。


どうしよう、こんな顔じゃ会えないよ。


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