あのとき離した手を、また繋いで。



世界が、目まぐるしく変わっていく。



「ありがとうございました〜」



店員さんの声に見送られて、外に出た。空の青さに目を細める。


コンビニではふたりともお弁当と飲み物を買った。右手には、それらが入った手提げ袋が握られている。


コンビニに入るとき、繋いでいた手を解いた。


もうかれこれ2時間は感じていたぬくもりがなくなり、妙な寂しさがこみ上げてきて、心が騒ついていることに驚いていた。


まさか、自分にそんな"手を離されて寂しく思う"ような、そういった感情が芽生えるなんて……信じられない。



「モナ」



彼が名前を呼んで、振り返る。隣に並ぶついでに手に持っていた袋をすっと受け取る彼。
私の両手が空いて、左手を夏希が掴んで、また繋がる。


夏希の顔を見ると目を細めて私のことを見ていて、思わず目をそらす。


なんなの、その、人を愛しそうに見る目線は。


ーー『好きなんだ、俺、モナのこと』


思い出される告白。体温が急上昇する。心臓が誤作動して、勢いよく血液を送り出しているのがわかる。


まるで爆弾を抱えているみたい。
だけど音はチクタクチクタクのように可愛らしくない。……ドキドキ、バクバクしている。


夏希のとなりにいると、心臓がもたないよ……。


しばらく無言のまま歩いて行くと、透き通ったブルーがどこまでも広がる海が見えてきた。
白い砂浜と、水面には太陽の光が反射してキラキラ輝いている。


例えるなら、宝石が散りばめられているようにも見えるが。



「わぁ……」



漏れた吐息。心からの、感動。



「綺麗だな」

「うんっ」



無邪気になる。童心にかえっていくよう。


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