あのとき離した手を、また繋いで。



「そりゃっ……!」



笑うことが我慢できなくなって、誤魔化すように手ですくった海水を夏希めがけて思いきりかける。


驚いた夏希が「うお!?」と体勢を崩した。
そのすきに立ち上がって私は逃げる。



「はははっ」

「モナ、おまっ……っ」

「へへへ、怒ってませんよーだ!」



振り向きざまに言葉を投げると、夏希も大笑いしながら「待てよ!」と追いかけてくる。


ふざけた悲鳴をあげて、ケラケラ笑いながら走って逃げても、すぐに運動神経のいい夏希に捕まってしまう。


後ろから抱きしめられるカタチで捕獲され、よろめくようにふたりで砂浜に転がった。


ザクッと、砂の上に落ちた音がした。


耳元でこらえたような彼の控えめな笑い声がする。私を捕まえている身体が小刻みに揺れている。


砂だらけの身体、制服。それらを気にすることなくそのままの体勢でいる。



「モナ、俺の彼女になる?」



彼の胸に抱き寄せられて、身体がこわばる。

真剣な声。言葉。告白。

身体の硬直をゆるめるようにチカラを抜いていき、最後に大きく頷いた。


そしたら夏希が勢いよく起き上がって「マジ?」なんてたずねてくるものだから私は上を向いて「なんで?」と質問を返した。


彼の後ろに太陽がある。すごく眩しい。



「彼女になってくれんの?」

「……してくれないの?」

「は、喜んで……!」



嬉しそうに笑う夏希に、私も嬉しくなる。


……好き、夏希が、私も。


私も起きあがって夏希の顔を見つめる。
砂があちこちについていて面白い。


ーーねえ、触れたくなったと言ったら、夏希は笑う?


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