あのとき離した手を、また繋いで。
「ははっ、ダメだな、俺たち」
「うん……」
「せーので離そうか」
頷いて夏希の「せーの」に合わせて手の力を抜こうとして……失敗した。ちなみに夏希も。
深くため息を吐いた夏希が空いた手で私の後頭部に手を回して私を抱き寄せる。
彼の胸にすっぽりおさまる私の身体。
不意打ちのその行為に、胸がドキッと高鳴る。
「ねぇ、モナさん?」
「なに?」
「俺ら磁石かなんかかな?」
「……わかんない」
「え、わかんないの?じゃあモナは磁石ってこと?」
「……もうっ、夏希、ばか!」
離れようとしたのに、がっちりホールドされていて逃がれようがない。
仕方なく胸のあたりを叩くけど、威力はあまりない。
「まあまあ、暴れないで」
「もう、離してよ」
「はーい」
離された身体と手。
両手を顔の横にあげて、抵抗しなくなった夏希をわざとらしくにらむ。
「可愛いよ?」
「なんか、あんたにバカにされるとムカつく」
「あれ?魔法がとけた?」
「そうかも!」
……嘘。とけるわけない。あまのじゃくな、だけ。
意地をはって、うまく笑えない。
いつもの可愛げのない私になっただけ。
「じゃあまた明日ね」
「うん……」
夏希が後ろ姿を見せて帰って行く。
このままさよならをしていいのかな。
明日学校へ行って、夏希に面と向かって笑って「おはよう」って言えるのかな。
このままだと今日一日起ったことが、本当に夢うつつの出来事になってしまうんじゃないの?
唇をくっと噛んで、小走りをする。
夏希の背中に手を伸ばして、制服を掴んだ。
「っ、夏希」
「どうしたの?」
「…………」
ドキドキしてうまく気持ちを言葉にできない。
なんて言ったらいいか、わかんない。
だけど……。
「私、ちゃんと好きだから、夏希のこと」