あのとき離した手を、また繋いで。
『お待たせ!モナ起きてる?』
「お帰り、起きてるよ。それよりちゃんと髪の毛乾かしたの?」
『いいよ、そんなことする時間あるならモナと話してたい』
「だーめ。風邪引くからちゃんと乾かしてきな」
『あー、わかったよ、もう』
再び無言になるスマホ。
しばらくして『乾かしてきたよ』と無邪気な声がした。
「えらいえらい」
『んー、てかめちゃ眠い』
「寝ていいんだよ?」
『んなもったいないことできっか!』
でも寝ないと絶対に明日きついよ……。
「きつくなったら遠慮なく寝てね」
『うん、さんきゅー』
「私が先に寝ちゃったりして」
『それでもいいよ。寝息聞きながら寝れるし』
それはそれで恥ずかしいかもしれない。
母に夜更かししていることがバレるとうるさいので部屋の明かりを消した。
スマホの画面の青白い光だけが部屋の中で目立っている。
たくさんの話をした。
先生のかつら疑惑やバイト先で出会った面白いお客さんの話。
聞いていてとても楽しくて、時間が経つのが早かった。
そして気がついたときにはもう朝だった。
窓のそとが明るくなっていることに気がついて慌てて飛び起きると、スマホに手を伸ばした。
時間ら朝の6時だった。
画面は通常通りの待ち受けと時刻を表示しており、通話は切られていた。
嘘……本当に私が先に寝ちゃったの?
最低だ。
夏希のほうが絶対先に寝たかったはずなのに。
邪魔な髪の毛をかきあげた。
【おやすみ。また学校で】
夏希からメッセージが届いていた。私は自分の頬を叩き、返信をする。
【おはよう。先に寝ちゃってごめんね】