あのとき離した手を、また繋いで。
昼休みになった。
私と夏希は屋上で昼食を食べていた。
騒がしい学校内。それでもここではふたりきりの世界にいるように、心なしか静か。ふたりきりでいるこの時間がたまらなく愛しい気持ちになる。
私、変なの。
あんなに目に見えない感情を信じていなかったのに、今はこんなにも夏希のことが好きで好きでたまらない。
この芽生えた気持ち、ずっと大切にしていたい。
「ふぁあ〜」
「眠いの?」
「ん、ちょっとな」
「寝る?」
「ん」
会話の自然な流れで夏希の頭が私の膝の上に乗った。
夏希の柔らかい髪の毛が肌に触れてくすぐったい。
そしてすこし恥ずかしい。いや、すこしじゃなくて、だいぶ。
「モナ、いい匂い」
「えっ」
「あー、俺、いま世界でいちばん幸せ」
それは私のセリフだった。
夏希に恋をするまでは、自分が世界でいちばん不幸なやつだとひねくれていた。
でもちがう。私は間違いなく、幸せものだ。
だって、夏希と出会えたのだから。
夏希が私の手を握る。私はその手を掴んで握った。手を繋ぐかたちになる。
この手、絶対離したくない。
夏希が私のことを好きでいてくれる。
私も、同じようの夏希のことが好きだ。
世界にはふたりしかいらない。
ううん、私たちの世界にはふたりしかいないよね?
「モナ」
名前を呼ばれて唇が塞がれる。
かぶりつくように下からキスをされた。
幸せに浸りすぎて涙があふれるかと思った。
溺れる。君に、君の愛に。
「夏希、愛してる」
「ん、俺も」
……だから、他にはもう、なにもいらない。