あのとき離した手を、また繋いで。



夏希のことだ。


"私、夏希と離れたくないよ……。"


口をついてでそうな本音に唇を噛んだ。


でも、なんでだろう?涙がでないの。
夏希のことがこんなに好きなのに。



「黒木さん……」

「……?」

「私、夏希に救われたの。ずっと噂のことで友だちもいなくて、ひとりぼっちで、本当の私を見てくれる人なんていなかった。でも夏希だけが私のことを見つけてくれたの」



私、ずっと夏希に感謝している。

だからこの恋は諦めきれない。

大切で、大好きで、愛しくて……。


どうしても、どうやったって、難しい。


無謀。だって、大好きな夏希と繋いだ気持ちを解いて、私じゃない女の子に、なんて。


考えるだけでどうにかなりそうなくらいだ。
ぐちゃぐちゃに絡まりあった運命の赤い糸。
どうやたって、私と夏希の小指を一本で繋いではくれないのかな。


わからない。夏希の答え次第だろう。



「夏希と話すから」



どうして初めての恋は叶わないなんて、そんな誰がつくったのかもわからないジンクスがいま頭に浮かぶんだろう。


ね、夏希……。



***



夏希と話すと決めたって、どうやっても勇気は出なかった。


"黒木さんから聞いたよ。"
"私と黒木さん、どっちを選ぶの?"


なんて、そんなこと聞けるわけなかった。


授業中いつも夏希は寝ているのに、ここ5日はずっと起きて授業を受けていた。
先生には「ようやく反省したのか」なんていじられていたけれど、夏希は乾いた笑いを浮かべて対応していた。


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