BLUE DAYS
何か、僕悪いこと言ったかな。女のコ、一瞬顔色が曇った。謝らなあかんかな。と思ったが、まぁよく考えたら、今日電車で初めて顔を合わせた二人が、こんなに普通に話してる事自体が、おかしいのだ。へんなおっさんって思われる前に、退散した方がええんちゃうかな。と思いながらも、身体が動こうとはしない。何かもっともっと話していたい。色んなコト聞きたい。そんな風にさえ思ってしまう。
「あっ。何かへんな事言った?」
沈黙を切るように僕は女のコに声をかけた。
何にもなかったかのように笑顔になって、
「えっ?なんでですか?」
女のコはツインテールの髪を揺らしながら、更にいい匂いをふりまいた。それにぼくは酔いそうになるが、ハッと我に返り、
「何か一瞬顔色が、曇ったように見えたからさ。僕ね、職業柄、人相手の仕事してるから、人の顔色の変化に敏感なんやんか」
「そうなんや。別に何もないですよ。でも、あながち鋭いかもしれませんね。でも。人相手って、どんな、仕事してるんですか?」
これって、こっちの話に、ちょっと乗ってきてるよね?
話したく無かったら、もう席を立って違うとこ行ってるよね?
身体と、気持ちのバランスが取れずに、僕は葛藤している。でも話を続けると言うことは、身体が勝っている。もっとこの女のコと会話したい。
「えっ?何の仕事か?って、うん。子ども相手やねん」
「子ども相手って、体操のお兄さん?」
「違うんやね。保育園の先生です」
そう言うと、カバンから名刺入れを取り出し名刺を渡す。
「保育士さんなんですか?佐畑さんなんですね。ああっ。そう言えば、子どもに人気ありそうな、感じする」
「マジで?それ、保育士の僕にとって最高の褒め言葉やんか。アイドルにめっちゃ可愛いって言ってるのと同じ位やで。でも、ホンマに本心?」
「わたしは、本心しか言わへんようにしてるから、大丈夫です。だってそういうオーラ出てるもん。でも色んなところで名刺貰ったことあるけど、電車の中で名刺貰ったのも初めてかも。今日は初めて尽くし。楽しくなってきた」
うわっ。笑顔めっちゃ可愛いやん。このオーラもすごい。この女のコの笑顔に吸い込まれそうやわ。そう思いながら、ホントに吸い込まれて周りが見えなくなっている。
今日の早番に感謝しなあかんかも。
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