選べるわけないじゃんっ！！

奈々美said

「…はいっ！何でもします！
なんなりとお申し付け下さい！」

そう言うと、男は私の顔をのぞき込んで、ニコッと笑った。

「何でも、してくれるの？」

「…はい、そうですけど？」

何か気にくわないことでも言ったかな。
私は心配になり、男の顔をのぞき返す。

すると男は、キラキラとした王子様スマイルから腹黒そうな不敵な笑みへと表情を変えた。

あらら…、私…この人の変なスイッチ押しちゃったみたい…。


「じゃあさ、まずは俺のこと名前で呼んでよ。その方が命令しやすいから。」

そう言って男は、ニヤリと口角を上げながら机にひじを乗せ、頬杖をついた。

「あ、あの…命令を聞くとは1度も…」

「…言う事。」

「えっ？」

話している途中でいきなり言葉を奪われてしまい、私はポカンと口を開けた。

「言う事『なんでも』聞いてくれるって、いったよな？」

「いや、そうなんですけど…」

「いったよな？」

「…は、はい。」

半ば強引に返事をさせられてしまった。

あはは…、なんかこの人の威圧感すごいんですけど…。
今更断れないよぉ〜。どうしろってんだい…。

「じゃあ、早く呼べよ。」

「うっ、えっとぉ〜…」


待ってよ…！この人の名前なんて知ってるはずないじゃん！
誰？！こと人！

「…チッ、めんどくせぇなぁ…。」

私が迷いながら目を泳がせていると、男は呆れた顔で私の顔へグイッと距離を縮めてきた。

「…っ！///」

そのせいで私の顔は一気にリンゴのように赤く染まった。

「何ウジウジしてんだよ。んな難しい事じゃねぇだろ。」

そんなこと言われましても…。


「…名前が、分かりません……。」

すると男は、瞳を大きく開け、驚いたような顔で私を見た。


「はっ？お前、俺の事知らねぇの？」

「知ってるわけないじゃないですか！今初めて会ったんですよ？！」