長い夜の終わりにキスを
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* * *
チュンチュンという鳥の囀(さえず)りが私を深い眠りの闇から次第に意識を現実へと引き戻していく。
「ん~...うぅん...。」
まだ寝たい、という気持ちとベッドから離れられないという二つが私の体にごろん、と寝返りをさせる。
起きなきゃ、起きなきゃという気持ちとは裏腹にもう一度睡眠の闇に落ちていく...
「アリアー!いつまで寝てるの!もう8時よ!」
のを母は許すつもりはさらさらないようだ。
母は私に寝続けるという選択肢を与えてはくれない。
「わかってるってばぁ...」
寝ぼけている頭と口では、ちゃんと言葉を紡げているのかもわからない。
もちろんそんな私の返事は母に届くわけもなく、一人、宙に舞ったまま誰にも届くことなく消えていった。
「んんぅ...」
「アリア。」
母の鬼のような一声に びくっ と背筋が反応した。
わかってるわね?と言わんばかりだ。
「...はい、おきます...。」
こうなった私はまるで蛇に睨まれた蛙だ。
私のその一言を聞くと、母は満足そうに部屋から出て行った。