長い夜の終わりにキスを




櫛を通し終わり横髪を残すと、今度は髪の毛の横を瞳の位置と同じくらいの場所を、両サイド編みこんでいく。

編み込んでいる間、あの時は本当にすごかったわ...いろんな意味で、とふと一年前の記憶へと遡(さかのぼ)っていく。
次々といろんなシーンを思い出す、けれど...

「一番衝撃的なのはあの、アベル君の姿だったなぁ。」


そう、14歳くらいにしか見えない彼が、ドラゴンからの攻撃に怯むこともなく、受け流していた所。

彼が私を守るように戦っていた所。

そのあと、一緒に街まで帰った時も、なんだか不思議と楽しかった。

思い出しながらふふ、と微笑んでしまった。


...まあ、そんなことどうでもいいわね。となんとなく考えることをやめたのと同時に、両サイドの編み込みが終わった。
そして今度はそれを後ろの真ん中で一つに束ねると

「...よしっ、完成!」

いつもの花屋で働くアリア=カトリックが完成した。

そしてもう一度時計に目をやると時刻は8:30。

「わっ急がないと!」
今日は水曜日ーー週に一度のギルドへの花束の配達の日だ。




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