長い夜の終わりにキスを
「はぁっ...、はぁっ...!」
ザッ ザッ ザッ と私に踏まれた草たちが音を鳴らす。
良く見知った森の中を全速力で駆ける、心臓が痛い。
「はぁ...っ、はぁ...っ、」
足も、痛い。
これまでの人生の中で、こんなに痛かったことなんてないくらいに、心臓も足も痛い。
「はぁ...っはっうぁっ!」
木の根っこに足を取られ、ズシャリと転んだ。
「いっ...」
手のひらと膝からジンジンと伝わる痛みに声が漏れる。でも、
逃げなきゃ...!
”逃げなければならない”その気持ちが私のジンジンと痛む足を、ドクドクドクと鳴る心臓を突き動かす。
右手を地面につき、立ち上がろうと手に力を入れ前を向いた時、
・・・・・
自分の影が少し大きいことに気が付いた。
瞬間、一際大きくドクン と心臓が嫌な音を立てる。
まさか...、その瞬間、私の心が恐怖一色に染め上げられた。
__頭の中では”振り返ってはいけない”と確かにわかっているのに、
__体は意思とは裏腹で。
__私は、後ろを振り返ってしまった。