長い夜の終わりにキスを
...いくら待っても、来るはずの痛みが来ない。
恐る恐る目を開けると、痛みの代わりに私に降ってきたのは__
「何やってんだ!!!諦めてんじゃねえ!!!!」
一人の青年...というには若すぎるであろう、背格好が14歳ほどに見える少年の怒声。
私に向けられたはずのあの大きくて立派な爪は、その少年には大きすぎるであろうサイズの大剣によって受け止められていた。
「...っだれ...?」
なんとか喉から発せられた私の声は何とも間抜けだ。
「そんなこと聞く前に、逃げろ!!」
こっちを一瞬たりともみず、ドラゴンと戦いながら目の前の少年はそう叫んだ。
その間も彼はドラゴンが幾度となく繰り返す攻撃を少年のもつ大剣が受け止めていた。
「いっ、嫌よ!」
私のために目の前の少年が死んでしまうのか。
そんなことがあっていいのか__いや、いいわけがない。
そう思うと、不思議とさっきまでの恐怖は心から消え、気が付いたら少年の言葉を遮って叫んでいた。
「は!?ふざけんなよおまーー」
「貴方と一緒に逃げるわ!!」
そして__5秒、彼と私の間で無音が響き渡った。そして私の言葉を理解した少年は「は?」とただ一言漏らした。
いつでも、少年と一緒に走れるように手にぐっと力をこめ、立ち上がろうとする。
すると少年は一度そんな私の姿をチラリと見ると、その視線をもう一度ドラゴンへと戻した。
そしてその数秒後、どうやら私の言葉が本気であると分かったのか、私に言葉を投げかけた。