俺のものとるなよっ。
優馬交通事故に遭う
響子と手を繋いで祐介の家に向かう途中、ずっと考え事をしていた。
響子は誰にも渡さない、触らせない、泣かせない。俺のものだ!と。
怖い顔をして歩く祐介に声をかける。
「ねえ、ちょっと祐介怖い顔してるよ。さっきから」
「えっ⁉︎そうだった?」
「うん、私祐介から離れたりしないから」
祐介の首に手を回してキスをする響子。
「響子、ありがと」
「ううん」
祐介の家に着いて。
「入って。今日母さん帰ってくるの遅いんだ」
「なんかそんな時にこそこそ上がったりして気がひけちゃう」
「いいんだよ、俺の家なんだから」
2階へ上がる祐介と響子。
「あれ?妹さんは?」
「美香は、友達の家にお泊まりに行ってるから今日は帰ってこない」
「そうなんだ」
祐介は、響子に触れたくて仕方なかった。
「俺の部屋こっち」
ドアを開けて、祐介は鍵を閉める。
「えっ、なんで鍵かけるの?」
「いや、誰にも邪魔されないように」
「誰にもって誰もいないじゃん」
「いいんだよ、いいから俺の言うとおりにしろよ」
響子をベッドへそっと押し倒し、キスをしようとした瞬間、祐介の携帯が鳴った。
トゥルルルルルル。
「携帯出ていいよ」
「ったく、いいところで鳴るなよ。っとに!」
「はい、もしもし」
それは予期せぬ知らせだった。祐介が通う遊星学園高校からの電話だった。
「遊星学園高校の柴山ですが、祐介か?」
「あ、はい。柴山先生どうしたんですか?」
「あのな、落ち着いてよく聞いてくれよ?」
「はい」
「お前の友達、香月がだな...」
えっ、優馬がどうかしたんですか?」
「ああ、家に帰る途中交通事故に遭ってな。今病院なんだよ。大した怪我じゃないみたいだが」
「あいつ何やってんだか。それでどこの病院なんですか?」
「えーっとな、朝日ヶ丘中央病院だ。悪いが行ってやってくれないか?」
「救急車で運ばれたんですか?」
「そうみたいだ。悪いな」
「いえ、すぐ行きます」
電話を切る祐介。
「ねえ、なんかあったの?病院とか?」
「ああ、優馬の奴交通事故に遭ったらしい」
「えっ⁉︎優馬が?大丈夫なの?」
「大したことないらしいけど、これから行くぞ」
「うん、どこの病院?」
「朝日ヶ丘中央病院」
響子と2人で病院へ向かう。
「ったく、優馬の奴なにやってんだよ。心配させやがって」
「元気だといいけどね」
「あいつのことだから、わりいわりい横断歩道でスマホ見てたらさ、車がぶつかってきてさ、でも僕の避け方がうまかったから大事には至らなかったけどねなーんてさ、笑ってんじゃん?」
「そんな人?優馬って」
「そう、そんな奴」
病院へ到着した2人。受付で聞いたら念のため1日外科病棟に入院と聞いて病棟に着いた。
病室で。
「香月優馬、名前あった、あった」
「優馬!」
病室に入ると優馬がいた。
「あれ!響子に祐介!来てくれたの!僕嬉しい!死ぬかと思ったよ」
「嘘つけ!お前のことだから、スマホ見ながら歩いてて車が来てるの分かんねえでぶつかったんだろ!僕の避け方がうまかったから大事には至らなかったって笑ってたんじゃねえのか?」
「えっ⁉︎なんでそんな細かいことまで分かるの?祐介!」
「ってことは当たりか!」
「見事、大正解!」
調子にのった優馬は拍手をする。
「バカ!そんなことで喜ぶな!心配させやがって」
優馬の頭を叩く。
「痛いなあ、祐介!僕病人なんだからもうちょっと優しくしてよ」
と響子の手を触る。
「おい!やめろ!響子に触るな!」
祐介の手でどかされた。
「祐介、いいじゃんちょっとくらい」
「そうだよ、優馬可哀想じゃん」
「ほらあ、響子共感してくれてるよ?」
「うるさい、俺は響子がかかってんだ!響子が泣いたら拓真が奪いにくる」
「えっ?そうなの?響子」
「うん、実はね。だから祐介必死なの」
「いいんだよ、響子は」
「ごめん」
「なんかずるいなあ、いつの間にか彼氏彼女の関係になってるしー」
優馬は頬を膨らませている。
それを見たい祐介は、ニヤッと笑って。
「しょうがねえなあ。俺からするのは最初で最後だからな」
「えっ?なになに?」
優馬の頭の中はクエスチョンマークが沢山で。
祐介は病室のカーテンを静かに閉める。
ちゅ。
「ほら、これで機嫌直せ!二度としねえからな。じゃあな」
「えっ、祐介嬉しかったよ。ありがとう、僕いい子にしてるからね」
「ああ、勝手にしろ。行くぞ、響子」
「えっ、優馬ほっといていいの?」
「大丈夫じゃねえの、今ので1週間は機嫌いいだろ」
「そうなんだ、優馬って祐介のこと大好きなんだね」
「俺は響子のが大好きだ」
廊下の端っこに来て、響子の唇に触れるだけのキスをした。
「ちょっと!祐介、ここ病院!」
「だから?病院でキスしちゃいけないってキマリあったっけ?」
「えー、ないけど」
「だろ!」
「ずるい、祐介は!」
「まあまあ、そう膨れるなよ。可愛い顔が台無しだよ」
「もう!」
響子は本気で怒っていた。内心は嬉しいんだけど。
その頃、優馬は布団をかぶってよっしゃー!とガッツポーズをして足をバタバタして喜びを表現していた。
すると、隣の患者さんから。
「香月さん、うるさいですよ。ここ病院ですから」
「あ、はい。すいません」
と怒られているのだった。
祐介と響子は、病院の外でも長いキスをしていた。