季節の狭間
1・冷華一族
この一族、冷華一族は他一族と比べ狂っていると長に仕えている氷(ひょう)は思っていた。
正しくは長である時雨(しぐれ)の冷徹ぶりは異常だと感じていた。
冷華一族を務める長たちは生まれながら心が凍てついた者たちだった。
しかし、それは一族を守るため長が負わなければいけない業なのだ。
そして感情がないといっても心がないわけではない。
つまり、長といえど周りと大してかわらない。
ただ一人、時雨を除いて。
時雨には妻との間に二人の子供をもうけた。
兄の名を冬牙(とうが)。
妹の名を刹那(せつな)。
冬牙は生まれながらに次期族長と決まっていた。
しかし一つ重大な問題が発生した。
冬牙ば普通の子供゛だったのだ。
母に誉められれば喜び、
妹が悪戯をすれば怒り、
父に叱られれば哀しみ、
氷に遊んでもらえば楽しんだ。
感情と表情が直結した普通の子供だったのだ。
しかし、族長候補が普通の子供ではいけない。
感情を決して表に出さず、絶対的に冷徹で冷静でなくてはいけなかった。
時雨はあまり悩まなかった。
どうすればいいかなんて、答えは初めから分かっていた。
ただ実行するかしないかだ。
父としての自分が反対した。
族長としての自分が実行した。
当時5歳にも満たない冬牙を、天窓がついただけの部屋に閉じ込めたのだ。
部屋に入室を許されたのは、時雨と氷のみ。
族長として、家庭教師として。
閉じ込められたその日から家族に会うことも出来ず、ただひたすらに知識のみ覚えていった。