愛し紅蓮の瞳
だけど、ここで逃げたらきっと、光蓮様に不信感を与えるだけ。
信じてくれている楓さんを裏切るようなものだ。



そんなの絶対に嫌だから、


「光蓮様、私はこんな世界知りません。東雲とか東里とか南梨とか……難しい苗字ばっかりで聞き慣れないし、着物だって着慣れてないからソワソワする。私の住んでた世界はもっとド派手で!車が走ってたし、ちょっと歩きはしたけど近くにコンビニだってあった。もっと現代的で、この世界とは似ても似つかない世界から私は……異世界ワープして来たんです!自分でも信じられないけど、でも、そうとしか考えられないんです」



何を言ってるのか、もう自分でも謎。
だけど、とにかく光蓮様に私が怪しい者じゃないってことが伝わればいいと願って早口に告げた。


いや、異世界ワープとか怪しさの極みだけど。今どきそんなこと、誰が信じるんだって話かもしれないけど。


この世界が今どきなのか、私の住んでた世界が今どきなのか、どっちが先の世でどっちが後の世なのか……それとも永遠に交わることがない世界なのか。


もう、ほんっと考えるだけで嫌になる。
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