愛し紅蓮の瞳
───ガランガランガラン

何とか御手洗を済ませた私は、カタカタと震える身体で拝殿の前まで来ると、大きな鈴を両手で必死に鳴らした。


『お賽銭はね、投げ入れるものじゃないのよ』


7歳の七五三の時に母から教えて貰った通り、お賽銭を賽銭箱の上にそっと置いて2回深く礼をする。


───パンパン


二礼二拍手一礼。
最後の礼と同時に、心の中でゆっくり、念じるようにお願いごとをする。


どうか、どうか知紘が無事、高校に進学出来ますように!!馬鹿だけど、誰よりも友達を大切にします。馬鹿だけど、何よりも家族想いです。


勉強は人より出来ないけれど、人として尊敬出来るところは沢山あります。

だからどうか、知紘が高校に進学して楽しい毎日を送れるように、力を貸してください!

お願いします!


なんて……完全に他力本願。

だけど、私はこうして祈るより他に、知紘のために何もしてやれない。


学校って確かにダルいし、周りに合わせることにたまに疲れたりするけど、やっぱり友達と一緒に学べる今が楽しいって素直に思うから。


中学を卒業してすぐに働くなんて、きっと進学するよりずっと険しいであろう道を、知紘には進んで欲しくない。
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