愛し紅蓮の瞳
……どのみち、私にはやっぱり無理そう。
だって涼風家が巫女の家系だなんて生まれて17年になるけど、1度だって聞かされたことはないし、


お母さんは普通の専業主婦。
おばあちゃんは趣味で料理教室を開いていた。



お父さんの兄弟には女の人はあまりいないし、昔から親戚の人はみんな男の人ばっかりな家系だった。


巫女なんて、探したって見つかる訳がない。


「蘭殿、ここが紅蓮様のお部屋です」



光蓮様から『とにかく1度、紅蓮にあって欲しい』と懇願され、断ることも出来ずにここまで来てしまった。


助けてもらったみたいだし、お礼がしたいって気持ちがないわけじゃない。


光蓮様の息子さんなんだから、きっと優しくて紳士な方なのだろう。


そう思うと、ちょっとだけ胸が高鳴るのも嘘じゃない。



「紅蓮様、虎太です。蘭殿をお連れしました」


私を案内してくれた虎太くんは、屋敷の1番奥にある部屋の前で膝を付くと障子の向こうへと呼びかける。



なぜか私の心臓がバグバクと音を立てて、緊張で手汗がやばい。


この世界の言葉に慣れていない私は、紅蓮様になんて挨拶をしたらいいのかソワソワしちゃうし、


なかなか返事をしない紅蓮様に不安が募る。
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