愛し紅蓮の瞳
「紅蓮様……」



───スッ



再び虎太くんが呼びかけたとき、ほとんど同時に障子が開いた。



その瞬間、



私は、息をするのも忘れた。




無駄に整ったその顔は、どこか光蓮様に似ているのに、


光蓮様とは違う真っ赤な瞳に真っ赤な髪。



葡萄色(えびいろ)の着物に光沢のある柄入りの袴は白練色をしている。


羽織は見事な紅(くれない)で、金の糸で昇り龍の刺繍が施されている。


羽織の襟には胸の位置に左右2つ、銀の糸で綺麗な蓮が咲いているのを見つけた。


紅蓮色した瞳が燃えてるみたいに、真っ直ぐに私を見つめて、そらしたいのに、そらせない。


なにこれ。
こんなの、初めてだ。






「っ……」


声が出ない。


だって、すごい綺麗な人。
こんな人……見たことない。


まるで恋愛ゲームに出てくるヒーローみたいに、キリッとした眉、薄くて形の良い唇、スッと通った高い鼻、驚くほど整ったその人は、


少しだけ長めの前髪から覗くその瞳をじっと見つめ返すだけの私は、



「何用だ」



低い中に、どこかまだ幼さの残る声が聞こえて、もう周りの音が何も耳に入らなくなった。


よく澄んだ、響く心地のいい声だ。



「光蓮様より、蘭殿を紅蓮様のお部屋へご案内するよう申しつかりました」
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