愛し紅蓮の瞳
「くだらん、帰れ」


「しかし」


「……こんな阿呆づらの女には、微塵も興味がない。助けてやったのも、家の周りで死なれたら迷惑だと思ったまで。深い感情はない」



そう無表情で告げて、私と虎太くんに背を向ける紅蓮様を目で追いながら、

私の中でプツリと何かが切れた。



「ちょっと、言わせておけば!聖様だか、ヒジキ様だか知らないけど、人がわざわざ慣れない着物でこの大きな屋敷の一番奥にあるアンタの部屋までたどり着くのが、どれっほど大変だったか!分かる?分からないでしょ!分かってたまるか!」


「は?」


紅蓮様が私を振り返って眉間にシワを寄せるのを見届けたあと、私の勢いはさらに増す。






「あー、アホくさ。光蓮様の息子って聞いてもっと優しくて紳士な方なんだろうな って思ってたのに、全然違うじゃん!

助けてくれたことは、例えどんな理由であれ感謝します。でも、私アンタみたいなヤツ嫌い。たった今、嫌いになった」


「……」


「ちょ、蘭殿!落ち着いてください!紅蓮様に悪気は」



「はぁ?あのね、悪気がなきゃこんな話し方しないでしょ!えらい人なのかもしれないけど、私には関係ない。

だって、私はこの世界の人間じゃないし、私にとってコイツはえらくも何ともないもん!」
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