愛し紅蓮の瞳
あちゃーと言いたげに頭を抑える虎太くんを見て、そこで初めて『やばい』と思った。



…………私を見つめる紅蓮様の瞳は相変わらず燃えてるみたいに紅いのに、なぜか寒気すら覚える。



「……おい」


「……あ、いや……」



やってしまった。
元々、気の強い性格が災いして……東雲家の次期3代目に喧嘩を売ってしまった。


自分が言ったことを思い出しては、顔から血の気が引いていくのが分かる。



「蘭、と言ったな?」



ねぇ、虎太くん。
この世界は、えらい人に喧嘩売ったりしたらどうなるのかな?

まさか、罪に問われたりしないよね?
処刑?処刑とかする?





「……入れ」


「ごめんなさ……え?」



再び静かに背を向けて、部屋の中へと入っていくその後ろ姿をボケーっと見つめれば、



「なんか…思いのほか上手く行きそうで良かったです。あとは蘭殿に託して、私はこの辺で失礼します。後ほどお迎えに上がりますので」


「え……待って!」


フッとちいさくわらった虎太くんが私にクルリと背を向けると早足に立ち去る。


その後ろ姿を見つめながら思う。



「お、置いていかないでよ……」
< 28 / 112 >

この作品をシェア

pagetop