愛し紅蓮の瞳
姉として、やっぱり知紘にもそれなりに楽しい学園ライフを送らせてあげたいのだ。


「よし!」


パチっと目を開けて、クルッと拝殿に背を向ける。


合格祈願の御守りでも買って帰ろうかな。
さすがにもう体の芯まで冷えきった。

帰ったら温かいコーンスープでも飲もう。


あ、今日発売の雑誌買わなくちゃ!
いや、でも待てよ?

そうと決まればコンビニにも寄らなきゃいけないわけで、最寄りのコンビニまで徒歩15分……。


寒さで頭おかしくなるかも。
これだから田舎って本当に不便。嫌になる。


───ビュ〜〜〜


北風が大きく吹き荒れて、木々に降り積もった雪が一斉に舞い上がる。


あぁ、ほんと無理……。
だめ、やめて。

冷たい風と雪を吸い込んで、なんだか私の肺まで冷えて来たような気がする。


極寒の地に生まれて17年。
やっぱり、寒さにはめっぽう弱いみたいだ。


「御守り買ったら真っ直ぐ帰ろ」


風邪をひいちゃ元も子もないもんね。

なんて、御守り売り場まで歩き出した私は、突然寒さを一切感じなくなった。

……いや、むしろ心地よくて暖かい空気に包まれている気さえする。


───なに?


紅い蜃気楼の中にいるみたいに、クラクラと歪む景色。
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