愛し紅蓮の瞳
「おい、聞いてんのかよ」


「……あ、言葉遣い」


そうだ、言葉遣いが現代っぽい!!
この世界ではこんな言葉遣いしないんだとばかり思っていた。


しかも、この東州という場所を統制しているらしい東雲家の次期3代目が……だよ?


驚き桃の木山椒の木でしょ!
いや、待って、やっぱり今のナシ。



「俺が堅苦しい話し方をすんのは屋敷にいるときだけだ」


「今だって、屋敷にいるじゃない」


「……一々うるせぇ女だな」


めんどくさそうに答える紅蓮様に、勝手に親近感が湧いてしまうのは現代っぽい言葉遣いのせいだろうか。


なんだ、ちょっと分かり合えそうじゃん。
この世界の言葉遣いがしっくり来なくて、ちょっとだけ不安だったけど


そんな時は紅蓮様と話せばいいのか。



「んなことより、質問に答えろ。お前はどころ娘だ?」


「さっきから、質問の意味がよく分かりません」


「……敬語だったり、そうじゃなかったり。ほんと良く分かんねぇやつだな」


「……ご、ごめんなさい。気をつけます」



キリッとした眉がやや八の字を描いて、少しだけ困ったような顔をするから慌てて頭を下げる。


ここに来て初めて紅蓮様が表情を変えた。


ふたりきりの空間は別に居心地が悪いわけじゃないのに、さっきからずっと私の心臓はバクバクと激しい音を鳴らしている。
< 31 / 112 >

この作品をシェア

pagetop