愛し紅蓮の瞳
その仕草は、さっき私が部屋へ入ったあの時の紅蓮とそっくりで、


あぁ、やっぱり親子なのだと納得するのに時間はかからなかった。




私を小上りへと上げたあと、同じく小上りへと上がり、人一人分離れて私と向かい合うように正座をした楓さんは、



「そんな緊張しなくても、すぐに終わるから安心なさいな」


ふわりと柔らかな笑みを口元に浮かべ、楽しげに笑う。


それに私が1度深く頷いたのと当時に、



「では、始めるか」


さっき光蓮様に顎の先で合図を受けていた男性と虎太くんが小上りへと登り、楓さんを真ん中にして3人並んで私と向かい合う形になった。



何?何なの?


キョトンと呆けた顔で3人を見れば、フッと小さく楓さんが笑ったような気がして背筋を伸ばす。


「これより涼風 蘭殿を我が東里家の養女として迎え入れる義を執り行う」



楓さんの隣で真っ直ぐ私を見つめていた男性が声を張り上げ、この部屋に彼の声だけが響き渡る。


その声を脳内で復唱すれば、


やっと、これから何が行われるのか少しだけ見えてきた。


楓さんは夜雨さんから酒器を受け取ると、手元の4つの盃へと注いでいく。
< 40 / 112 >

この作品をシェア

pagetop