愛し紅蓮の瞳
そんな生活2日目にして、もう既に心はポッキリ折れかけていて、なんで紅蓮のために私がここまでしなくちゃいけないんだ!!

なんて、今更我に帰ってみたけれど、今更どうすることも出来ないのが現実だ。







「蘭」





───ドキッ




突然、後ろから名前を呼ばれて肩を揺らした。


「紅蓮……?」


恐る恐る振り向いた私の視界には、やっぱり部屋の入口に腕を組んで仁王立ちで私を見下ろす紅蓮がいて、


「聖様!いらっしゃるとは知らず、お出迎えもしませんで……」



頭を下げるお母さんが私にも頭を下げろと目で合図するのを見て、慌てて頭を下げる。



「"ただ普通に生活をする"ことを競うと言うことは、何か一つに特化していればいいと言うわけではない。満遍なく、全てのことを卒なくこなすことが求められる。ましてやこの世界に疎いお前は、着物すらまともに一人で着られやしない。……怠けてる暇がないことは自分でも分かるであろう?」


「……はい」


双葉さんの出した勝負のお題は「ただ普通に生活する」ことだった。


つまり、その中で双葉さんは人として女として、私と涼音さんのどちらが東雲家に……紅蓮に相応しいかを見極めるつもりなのだろう。
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