愛し紅蓮の瞳
双葉さんの凛とした姿を思い出して身震いする。


初めて光蓮様へ挨拶に伺った時、私と双葉さんは似ているって言っていたけれど、


ちーーっとも似てないじゃない。


あの日から光蓮様や双葉さんに会うことはなく、東里家の離れで過ごしている私は明日、涼音さんが東雲家へ到着するのに合わせて、再び東雲家へ向かうことになっている。


どんな人なんだろう、とか。
たのしみだな、なんて感情とは無縁で


今はただ恐怖に支配されている。


表面上は別に負けたって構わないって思ってるのに、昔からの負けず嫌いが災いして、心の奥底では負けたくない自分がいたりする。


「では、次に進みます」


背筋をピンと伸ばして、正座したまま綺麗に座るお母さんに、もう足が痺れて限界を迎えそうな私がコクリ頷いた時、




「そのような事は良い。それより、蘭を今夜借りたいのだが」


「……は?今夜借りたい??何それ、なんか響きが嫌なんだけど」



紅蓮の思わぬ言葉にバッと勢いよく顔を上げれば、次いで顔を上げたお母さんが驚いたように目を丸くして、


それからスグに小さく笑った。



「かしこまりました。夕刻には東雲家へお連れいたします」


「え、待って!今夜借りたいってどういう意味?話があるとか?ちゃんと東里に帰って来れるの?」



まくし立てるように質問を繰り出す私を、愛も変わらず表情1つ変えない紅蓮は見つめている。
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