愛し紅蓮の瞳
抱き枕にするってことは
=抱きしめるってことでしょうか?


それは、何もしないとは言いません。


心の中でどんなに抵抗してみても、物凄い剣幕の紅蓮の瞳に



「……はい」



逆らえない自分がいる。

そんな私に満足した紅蓮が、再び前を向き直って歩き始めるのを見送ったあと、私も静かに立ち上がった。


でも、立ち上がるだけ立ち上がったら、何だか少しだけ足が震えて、中々踏み出すことができない。



だって、ろくに恋愛経験もないのに!いきなり好きでもない男と、しかも1つの布団で一緒に寝ろなんて……難易度高いどころの話じゃない。


それに、紅蓮ってば大事な話をしておきたかったとか言いながら、結局 何も話してくれてないじゃん!



───グイッ


「おっせぇ」


「……おわっ」



自分の中で色んなことを葛藤している間に、先に布団へと向かったはずの紅蓮がすぐ側まで戻ってきていたらしい。


なんて、私がそのことに気づいた時にはもう


私の手首は紅蓮の大きな手にスッポリと包まれていて、有無を言わさずただ、引きずるように歩かされていた。




───ドッドッドッド



うるさい。うるさいうるさい。


布団に着くなり私を後から抱きしめるようにして眠ってしまった紅蓮。


私は1人、自分のうるさい心臓の音と格闘中だ。
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