愛し紅蓮の瞳
……心のどこかで、もし妃になったとしても、元の世界へ帰る方法が見つかったら、
その時は全て放り投げて帰ってしまえばいい……そう思っている自分がいた。
元の世界にさえ帰れたなら、こっちの世界のことなんて……そんな自分勝手な考えがあった。
だけど、この世界に、そして三代目となった紅蓮にそれはきっと大きく影響する。
この世界で紅蓮を支えて生きていく覚悟がないのなら、初めから妃になんてなってはいけない。
涼音さんに全てを任せて、この世界にいる間はお母さんの傍で一生懸命手伝いをするのが私にとってはきっと最良。
……そう、分かってはいるのに。
「蘭さん!」
多代さんの姿が見えなくなった廊下に、一人立ち尽くしたままだった私は、突然声をかけられ顔を上げた。
「あ、姫蓮ちゃん」
「少し話しませんか?自分の部屋にいると、何だか息が詰まっちゃって」
「また何かあったの?あ、どうぞ」
自分の部屋の戸を開けながら、姫蓮ちゃんに声をかければ、不貞腐れたような顔をしながら姫蓮ちゃんは部屋へと足を踏み入れた。
初めて東雲家で朝食を食べたあの朝から、姫蓮ちゃんは何かと良くしてくれて、今ではこうして姫蓮ちゃんが部屋に遊びに来るのも珍しくない。
妹のように懐いてくれて、私にとって東雲家での暮らしの唯一の癒しだ。
その時は全て放り投げて帰ってしまえばいい……そう思っている自分がいた。
元の世界にさえ帰れたなら、こっちの世界のことなんて……そんな自分勝手な考えがあった。
だけど、この世界に、そして三代目となった紅蓮にそれはきっと大きく影響する。
この世界で紅蓮を支えて生きていく覚悟がないのなら、初めから妃になんてなってはいけない。
涼音さんに全てを任せて、この世界にいる間はお母さんの傍で一生懸命手伝いをするのが私にとってはきっと最良。
……そう、分かってはいるのに。
「蘭さん!」
多代さんの姿が見えなくなった廊下に、一人立ち尽くしたままだった私は、突然声をかけられ顔を上げた。
「あ、姫蓮ちゃん」
「少し話しませんか?自分の部屋にいると、何だか息が詰まっちゃって」
「また何かあったの?あ、どうぞ」
自分の部屋の戸を開けながら、姫蓮ちゃんに声をかければ、不貞腐れたような顔をしながら姫蓮ちゃんは部屋へと足を踏み入れた。
初めて東雲家で朝食を食べたあの朝から、姫蓮ちゃんは何かと良くしてくれて、今ではこうして姫蓮ちゃんが部屋に遊びに来るのも珍しくない。
妹のように懐いてくれて、私にとって東雲家での暮らしの唯一の癒しだ。