狂愛彼氏
私は、首を傾けた。肩に頭を乗せているのは男の人、だよね?
(…反応、しない…?)
まじまじと私の肩に頭をのせている疾風さんを見る。
どこをどう見ても男の人だ。
私は、男の人に触られるのがとても苦手だ。
触られると全身に蕁麻疹が出てしまう位に拒絶反応が出てしまう。
話をするのは何とか大丈夫だけれど、他はダメ。
ある理由があるけれど思い出したくもない。
男性恐怖症なのに、この人に反応しないのはなぜだろう?
「遥ちゃん、ごめんな?」
申し訳なさそうに優さんがバックミラー越しに謝ってくる。
「いぇ……」
思考を中断して首を振る。
「そいつ、俺様だけど、根はいいやつなんだ」
だから、許してやって。
そう微笑む優さんは、優しい人だなと思った。
私は、肩に重みを感じながら、また窓の外の景色を眺めた。
前の座席では、愛麗と優さんが話に華を咲かせている。
私は、その会話には入らない。
ただ二人の会話を右から左へと流しながら、外を眺めているだけ。
「…………」
だから、気づかなかった。
寝ているはずの疾風さんが実は寝ていなくて、私の横顔を見ていたことに。