狂愛彼氏
「………だったら、何故、来たんだ。」
そんなこと決まってるじゃない。
頭の中では駅前のカフェのケーキがズラリと私の前に並んでる………やば、よだれが。
「ケーキのためです」
「は?」
「ケーキ、奢ってもらうんです」
何時、奢ってもらおうかな?あー待ち遠しいっ
「………物につられたわけ?」
呆れたような声色に、私は、そうですねと苦笑する。
「ケーキ、好きなのか?」
「甘いもの、大好きです」
甘いものを考えると自然に頬が緩む。
甘いものを考えた人は、天才だよ。
「………笑えんじゃねえか」
「え?」
ポソリと何か呟かれたような気がして、疾風さんを見ると、先ほどまでの疾風さんとは思えないくらいに優しい表情をしていた。
――――びっくりした。
あんなに不機嫌そうで笑うことなんて知りません、みたいな感じだったのに、不意をつく笑み。
さっきまでの怖さとか無くなって、優しい感じ。
(………笑ってればいいのに)
「……………変わってないな」
「?」
「何でもない」
ポソリと何かを呟いたようだったけれど、私の耳には届かなかった。
首を傾けるが、それ以上何も言わなかった。