狂愛彼氏




割りふられた部屋は四人でも広かった。
部屋の中に入って、少し明かりを暗くする。


私は、愛麗の隣に座った。
反対側には優さん、そして、


(………え)


疾風さんは、何故か私の隣に座ってしまった。


(なんで、)


優さんの隣に座ると思っていたのに、疾風さんの行動に驚く。


「あの、」

「あ?」

「…………何でもないです」


ほんの数分前のあの優しい表情は何処へやら、疾風さんは元の怖い表情に戻っていた。

ビクッと僅かに震えてしまった私に、疾風さんは小さく舌打ちをした。


(舌打ち……)


「ほら、遥も曲入れなよ」

「あ、うん……」


愛麗に促されて私は、曲選びに専念する。
最初は、初めて男の人の前で歌を唄うから緊張したけれど、だんだん慣れてくるといつも愛麗と一緒に行っている感覚で歌えた。
それから二時間、カラオケはとても楽しかった。
だけど、隣に座っている疾風さんが気になって仕方がなかった。
不機嫌だったり、優しい表情したり、その温度差が激しすぎる。
あの表情は親しみやすかったのにな、と思いながら、私は、心の中で呟いた。
優さんもとても歌が上手だった。人気の男性ダンスグループの曲をかっこよく歌っていて、愛麗は惚れ惚れしていた。







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