狂愛彼氏
疾風さんは、歌を唄うのがあまり好きでないのか1、2曲くらいしか歌っていなかった。ますます、なんで今日来たんだろうと不思議に思う。
カラオケの2時間はあっという間だった。
10分前に、店員から時間を知らせる電話が入って、延長するか聞かれたけれど、延長はしなかった。
お金を払い、入口で愛麗に手を振る。
「じゃあね」
「送るよ?」
「近いんで、大丈夫です」
帰ると告げると、優さんは寂しそうな顔をしてくれた。
そして、送るとも言ってくれて気遣ってくれた。
本音は愛麗と一緒にいたいくせに、優しい人だ。
態々送るなどと良くできた人。
「そう?」
「ありがとうございます。今日は楽しかったです。
」
「じゃあ、また明日ね?」
若干、心配そうな愛麗に私はニヤリと笑う。
「愛麗、忘れないでよ?」
今日、一緒についてきてあげたのはケーキにつられたんだから。
その意味を込めて言うと、愛麗は肩を竦めた。
「分かってるわよ」
隣で優さんはニコニコ笑っている。
(そういえば、どっちから告白したんだろ?)
ふと二人の馴れ初めが気になった。
それはまた明日にでも聞いてみよう。
「あれ、疾風さんは……?」
ふと周りにいない疾風さんの姿を探すと、疾風さんは、少し離れた所でタバコを吸っていた。