狂愛彼氏
(やっぱり、見た目と違って優しい人なのかな……?)
ジッと疾風さんを見つめると、疾風さんは私の視線に耐えきれなくなったのかそっぽを向いた。
その姿に私は、心の中で笑う。
「私なんか、誰も襲いませんよ」
「……」
「ありがとうございます。気持ちだけで十分です」
「………お前、」
「それでは」
何か言おうとしていた疾風さんを遮って、頭を軽く下げ、私は、自宅へと足を進めようとしたけれど、パシッと腕を捕まれてしまい、足を止めるはめになった。
「疾風さん?」
「ちょっと来い」
「へ?ちょ、ま、」
スタスタと私の腕を引っ張りながら、私の家とは逆方向に歩き出した疾風さん。
引きずられるように駆け足気味になりながら私は、疾風さんの行動に戸惑うばかりだ。
「あの、疾風さん!」
「あ?」
「どこに行くんですか!」
「……」
(シカトかよ!!)
何も言わない疾風さんに、私は、その手を振り払おうとするけどガッチリと捕まれていて払えない。
(………はぁ、)
諦めるのは得意だ。
私は、抵抗するのを止めて、疾風さんに連れられるまま歩いた。