狂愛彼氏
「疾風さん」
「なんだ?」
「どうして、ここに?」
私の家とは正反対の場所にあり、私の知らないカフェへどうして連れてきたのか。
カラオケから帰り道、疾風さんに連れられて着いた先がここだった。
「甘いもの好きだって言ったから」
「それだけ、ですか?」
「俺が一緒にいたいと思ったから」
「……………………………は?」
たっぷりと呼吸を置いた後、私は、瞬きをした。
今、なんて言った?
「お前と一緒にいたかったから」
ご丁寧にもう一度言ってくれたけど、私の頭の中では何故、しかなかった。
だって有り得ないじゃない。
黒髪に白金の怖そうなでも顔は整っている疾風さんが、地味で感情表現が上手くできない私と一緒にいたかった?
しかも今日会ったばかりなのに?
………やっぱり有り得ない。
(冗談にしては、きつすぎる)
「そ、うですか」
しかし、どうやって返事をしたらいいか分からなかったので、小さく返事をしてからケーキを一口。
「…………お前さ」
取り敢えずケーキに集中することにした私に呆れたような声が降ってきた。
「……はい」
「なんでそんなに自分を卑下にする?」
「え……?」
ケーキにさそうとしていたフォークを止め、疾風さんを見る。