狂愛彼氏
「凄いじゃん!」
「んー……」
「疾風さん、女にメアド聞くことないらしいよ!」
「へぇ」
「ついに遥にも春が来たわー」
まるで自分のことのように愛麗は喜ぶ。
当事者の私は、愛麗の言葉に何の感動も沸かなかった。
「………こんな地味な私に会って疾風さんは何がしたいのかな」
「え!?なに、会う約束したの!?」
迫力ある愛麗の勢いに、私は身を引いてしまう。
「な、なんかメールが……」
「まぢ?!優に報告しなきゃ!」
愛麗は即座に携帯を取り出すと、物凄い早さでメールを打つ。
「なんで、優さんに?」
「優と疾風さん兄弟だもん」
「………え?」
「二卵性の双子」
双子……?
二人の顔を思い出してみる。
言われてみれば、似ているような……。
「嬉しいなー、二人がくっつけばダブルデートも出来るし」
今にも鼻歌をしそうな勢いの愛麗の言葉に私は心の中で否定した。
(有り得ない)
疾風さんと私が……なんて。
疾風さんにはもっと可愛くておしゃれな人が似合ってるもの。
自分が疾風さんと一緒にいる姿なんて、想像できない。
それに、恋人って一緒にいるだけじゃないでしょう?
・・・うん、無理。
「楽しみでしょ?」
「んー」
「反応薄っ!」
「だってさ」
「あーもう!」
ガタッといきなり立ったかと思えば、愛麗は私の腕を掴んだ。