狂愛彼氏
そういえば、化粧の落とし方愛麗に聞くの忘れてた。
たぶん、化粧落としを使えばいいけれど、普段化粧しないから自分のは持っていない気がする。
帰りに薬局寄って買っておかなきゃ。
(私、女じゃない…)
内心笑う。
すると、運転席からため息が聞こえてきた。見ると、呆れたような表情の疾風さんが私をチラッ見た。
信号機が赤になって車が止まった。
ようやく、疾風さんと目があった。
「お前………気づかなかったのか?」
「?」
首を傾けると、またため息をつかれた。
信号機が青に変わって、車が発進する。
「周りの目だ」
言われてさっきを思い出す。
私の通う学校は、短大と大学とが一緒になっている。
短大の方はほとんど女子しかいない。
でも、大学の方はどちらかというと機械系なので男子の方が多いと思う。
お互いの生徒が行き来する道もある。
校舎を出て、みんなが歩く道には人がちらほらいて、何人もの視線は確かに感じていた。
「あぁ………私が変だからじゃないんですか?」
それか、可愛い愛麗を見ていたか。
「………鈍感」
ポソリと呟かれた言葉は、私にしっかり届いていて、私は、ムッとした。
「どういう意味ですか」
「そのまんま」
もう少し、警戒心持て、と言われる。