狂愛彼氏
「ついてる」
「あ……」
その親指は、そのまま疾風の口元に持っていかれて、ペロッと舐めた。
「あま……」
「っ、」
その仕草がいやに妖艶に見えて、私は、頬に熱が集まるのを感じた。
(な、なに今の……!)
今まで、感じたことのない感情に私は、戸惑う。
そして、疾風にバレないように目の前のケーキに集中した。
ケーキで満足してお腹いっぱいにもなった。
お店を出るときお会計は、自分の分は自分で払うと言ったのに、疾風は聞き入れてくれなかった。
財布からお金を出そうとすれば睨まれ、私は、渋々お金を戻す。
ありがとうございましたー、と店員の声を後ろに店を出た私達は、車へと向かう。
「疾風、お金を、」
「まだ言うか」
「でも、」
「いいから、俺が払いたいから払ったんだよ」
お前は気にするな、と疾風は言うけれど、私ばっかり食べて殆ど私の代金だ。
おごってくれるのはありがたいことだけれど、なんかそれを疾風に払わせるのは………と思っているのに疾風は気にするなの一点張りでお金を出そうものなら震え上がるような睨むを向けてくる。
―――折れたのは私の方だった。
(どうせ、譲らないだろうしな……)
頑固者。
私は、心の中で呟いた。