狂愛彼氏
再び車に乗って、今度は沢山ではないけれど話をしながら車は進む。
陽は沈み、薄暗くなってきた。
(そういえば、)
私は、あることを思い出す。
疾風、と呼ぶと声だけで答えてくれた。
「………聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「どうして、今日……?」
「?」
疾風は首を傾ける。
「私にメールしたのかなって」
思って、と告げると、車が速度を落としてゆっくりと止まった。
外を見ると、見慣れた場所。
私の住むマンション前だった。
「知りたいか?」
「……それは、」
知りたいに決まってる。
地味で余り話さないつまらない私にどうしてだろう。
ジッと疾風を見つめると、疾風は車から降りた。
そのまま、助手席の方に回ってきて、ガチャと開けられる。
見上げると、疾風は、身を中に入れてきてシートベルトを外して私の手を引いた。
そのまま、私は車から出る。
「あの、……?」
「お前は、覚えているか」
「?」
ドアが閉められて、前には疾風、後ろは車に挟まれる形になる。
「何を?」
「思い出したら教えてやるよ」
「?」
何を思い出すのか。
私と疾風の間に何かあったのか。
でも、昨日が初対面のはずだ。