狂愛彼氏



すると、疾風は小さく笑うと私から離れた。


「また、連絡する」

「ぁ、うん……」


釈然としないまま私は、車から離れてマンションへと足を進めた。


「遥」


背後から呼ばれて振り替えれば手をぶらぶらさせている疾風。
その手には、私の携帯が握られている。


「あ」


すっかり忘れてた。


踵を返して、私は携帯に手を伸ばす。
でも、疾風は私の手の届かない高さまで携帯をあげる。


「………」


無言で睨むと、疾風は笑う。


「返してほしいか?」

「もちろん」


しかし、私より背の高い疾風に余り背が高いとはいえない私は、届くはずもなく。
ジャンプしてとろうともしたけれど、更に疾風が手を上げるので、携帯は遠ざかっていく。


「どうしようか」

「返して」


背伸びをしても届かない。
思わず地団駄を踏みたくなった。
そんな私に、疾風はクスクス笑いながら、ほら、と携帯を返してくれた。


携帯を受け取って開けると、画面は真っ暗。


「電源切れてる……」

「邪魔されたくない」

「………」


(邪魔されるほどメールとかこないけどな)


愛麗くらいだし。
携帯のメモリは多いけどその全員と連絡とってはいないしな。


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